限界集落を、宴会集落に!
年中みかんのとれるまち、御浜町。実は、美味しいのはみかんだけじゃない。「お米」も、町の人が誇る特産品なのです。そして、米所である山間部・尾呂志地域で育てられた酒米「神の穂」から作られる、知る人ぞ知る日本酒があります。その名も「颪(おろし)」。お米の豊かな風味の中にさっぱりとした甘みを感じる、純米大吟醸らしい贅沢な味わいです。
山間の尾呂志地域は、昔から山と海を繋ぐ要衝の町として栄え、世界遺産・熊野古道が通る集落でもあります。尾呂志には、名物の「風伝おろし」という自然現象があります。熊野の山々からの豊かな水と、山の間から吹きおろすその風が、稲についた朝露を吹き飛ばし、害虫がつきにくい環境をつくる。そして風がつくる昼間と夜の寒暖差が、美味しいお米を育んでくれるのです。
この地域には、大正時代まで地域唯一の酒蔵があったのです。尾呂志のお米を使って、酒造りが行われていた。それならば、ここで作った米でお酒が作れるのではと、立ち上がった尾呂志の米農家たちがいます。
尾呂志地域の田んぼを守りたい、そして地域活性化のためにと、2014年「尾呂志『夢』アグリ」という団体が立ち上がりました。「田んぼからおちょこまで 〜限界集落を、宴会集落に!〜」を合言葉にして。
夢アグリは三重県、熊野市の企業、そして大田酒造(三重県伊賀市)と共に、4年という歳月をかけて日本酒「颪」を生み出したのです。
「尾呂志『夢』アグリ」の代表、辻󠄀本満哉さんはこう語ります。「儲けるために作ったお酒じゃないんよ。後継者不足の問題と向き合う米農家仲間で、『なんとかせな、俺らだけでも、もがこうや』と始めたんです。田んぼがなくなったら、地域は荒れていく。見慣れた美しい風景も失われてしまう。米しか作れない俺らが、酒米を作って、お酒を作ることで、何かのきっかけになるんじゃないかと思ってさ。失われてからでは遅いんさ。」
米作りはできても、お酒作りはできない「夢アグリ」のメンバーたち。「三重県産」にこだわって、一緒にお酒を作ってくれる酒蔵を探しました。そして辿りついたのが、三重県伊賀市にある蔵元「大田酒造」。伊勢志摩サミットで振舞われた「半蔵」を生み出す、三重県が誇る造り酒屋です。「半蔵」にも県の酒米「神の穂」が使われていて、「颪」は半蔵の隠れた姉妹品となったのです。
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辻󠄀本さんは、こう続ける。
「地元の人からしたら、ちょっと高いお酒やね。まだ、飲んだことない人も多いんやないかな。俺らは儲からなくても、米農家だから、酒米を買ってもらっているから、それでいい。でもね、「地域」でみたら、価値を出せていると思うんさ。米農家もどんどん減ってきて、高齢化も進んでる。それを憂いているだけじゃなくて、何かできることをやりたいんさ。「地域の酒」なんやし、誰かが一緒にやろらいと、手を上げてくれる人が出てきたらええな、って思っとるんよ。」
「田んぼから おちょこまで 〜限界集落を 宴会集落に!〜」を合言葉に、走り続けてきた辻󠄀本さんたちは、今年も9月に稲刈りが終わったところだ。そのお米で作る今年の新酒を、楽しみにしたい。
*新酒の時期は毎年2月頃です
・中道酒店 (御浜町下市木)
・小倉屋商店 (御浜町志原)
・山田商店 (御浜町尾呂志)
その他、熊野市駅前特産品館、お綱茶屋(花の窟)、紀宝町 道の駅ウミガメ公園、尾鷲市 おとと、などで販売されています。
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甘さと酸味のバランスが良い、三重南紀・御浜のみかん。
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