世界遺産でもある七里御浜を歩く、熊野古道伊勢路のルート。
紀伊半島の中南部に位置する聖地・熊野三山を目指し、平安時代から多くの人々が歩いてきた信仰の道、熊野古道。
その中でも、伊勢から東紀州地域を縦断する全長約130kmの道が、伊勢路と呼ばれています。
現在の熊野市にある花の窟神社から、熊野古道伊勢路は2つのルートに分かれています。
一方は、七里御浜に沿って熊野速玉大社が座す新宮へと向かう「浜街道」、そしてもう一方は、内陸の山側を通って最短距離で直接熊野本宮大社に向かう「本宮道」です。
浜街道は、海の果てにあると言われる聖地「補陀落渡海」の信仰が残る、熊野灘を望む道。
御浜小石とも呼ばれる玉砂利が敷き詰められた風光明媚なこの道は、現在世界遺産にも登録されています。
美しく広大な熊野灘の風景を眺めながら歩くことができる浜街道。道も平坦で歩きやすいため、気軽に海側の熊野古道を味わえます。
国道42号線沿いには道の駅などの休憩スポットも充実しており、地元の食も楽しみながら歩けるのが魅力です。
玉砂利の上を歩く「海の熊野古道」
熊野市有馬町にある、日本最古ともいわれる花の窟神社を出発して、海沿いの堤防の道を進みます。
堤防には浜辺に降りる階段が設置されているため、波打ち際を歩くこともできます。
堤防や道がなかった数百年前には、巡礼者は皆、浜辺の砂利の上を歩いて熊野三山を目指していました。
丸みを帯びた大粒の砂利浜は、意外にも歩きやすいですが、それでも少し歩くと息が上がってきます。
江戸時代にこの道を歩いて旅した人々にとって、草履でこの道を進むのは大変だったかもしれません。
緑豊かな防風林の中を歩く
また、海とは反対側の防風林へ降りる階段も随所に設置されていて、林の中の自然探勝路を歩くこともできます。
この防風林は、江戸時代に紀伊新宮藩主の水野重央が、静岡から取り寄せたクロマツの苗木を植樹したことがはじまりです。
波音や鳥のさえずりが聞こえ、心地いい森林浴を楽しみながら歩くことができます。
水難の危険と隣り合わせだった江戸時代
つづく志原川の河口近くには、有形民俗文化財の龍神燈が立っています。これは、大波による災害が収まることを祈願して建てられたものです。
現在の志原川には立派な水門のついた橋が架けられていますが、巡礼が盛んだった江戸時代には、歩いて河口を渡らなければなりませんでした。
波の引き際を狙って急いで河口を走り抜けようとして、大波にさらわれて命を落とす人も少なくなかったようです。
志原川を渡った先にある神志山の古道沿いや市木川の河口にも、波にさらわれ命を落とした人々を弔い、旅の無事を願う供養塔や水神塔が建てられています。
「荒波や 浪に目を吹く 髑髏(しゃれこうべ)」寛政7(1796)年に浜街道を歩いた巡礼者が残した句からも、当時の浜街道の旅路の危険さを想像することができます。
お食事処や道の駅、ホテルでゆっくり一休み
志原川を越えた先から国道42号線沿いを進んでいくと、おいしい手打ちうどんが食べられる「大石家」「こいし亭」などのお食事処や、料理自慢の宿「はまの家旅館」、みかんの無人販売を行っている「フルーツマーケット市木」などに立ち寄ることができます。
さらに先へと進み御浜町の阿田和地区へとさしかかると、みかんの木をモチーフにした看板が目印の「道の駅パーク七里御浜」が見えてきます。
ここでは、地元の農産物や魚などを購入できるお土産どころ「浜街道」、地元の名産を活かした郷土料理が味わえる食事処「ごちそうダイニング」のほか、七里御浜ツーリストインフォメーションセンター内の「御浜Blues Café」では、名産みかんジュースの飲み比べもできます。
JR阿田和駅や、バス停、宿泊施設「フェアフィールドバイマリオット三重御浜」もあり、旅の中継地点としてゆっくり休むことができます。
さまざまなルートを選んで楽しめる、浜街道歩き
雄大な熊野灘を見下ろしながら歩く堤防の道、さらに海を近くに感じられる七里御浜の上を進む道、緑豊かな防風林の中を歩く道、食事やお土産を楽しめる国道沿いの道と、さまざまなルートを楽しめるのが浜街道の旅の魅力。
歩くのに自信がないという方には、七里御浜ツーリストインフォメーションセンターでレンタサイクルを借りて、堤防沿いの道を走る旅もおすすめです。
御浜町ならではの名産品や食事を楽しみながら、浜街道の歴史に触れる旅を楽しんでみてください。
歩行時間: 約4時間距離: 約12.2km (花の窟神社〜道の駅パーク七里御浜間)
(スタート地点へのアクセス: JR有井駅から、花の窟神社まで徒歩13分)
KUMANO KODO (ISEJI South) / 熊野古道伊勢路(南)マップ(PDF)
熊野古道伊勢路を通しで歩く方に向けて作られたマップ。標高やルート上のトイレなど、詳しい情報が図を使って記載されています。表記は英語ですが、英語が苦手な方でも見やすいように作られた地図です。
浜街道(北側)のマップは、6・7ページに載っています。
観光する
風に乗った霧が滝のように山の斜面を流れ落ちる、神秘的な現象。
世界遺産登録から20年の節目を迎えた熊野古道
山奥の秘境に突如として現れる、二つに割れた巨岩の正体とは