山と海を結ぶ生活の道としても栄えた、熊野古道伊勢路のルート
紀伊半島の中南部に位置する聖地・熊野三山を目指し、平安時代から多くの人々が歩いてきた信仰の道、熊野古道。
その中でも、伊勢から東紀州地域を縦断する全長約130kmの道が、伊勢路と呼ばれています。
現在の熊野市にある花の窟神社から、熊野古道伊勢路は2つのルートに分かれています。
一方は、七里御浜に沿って熊野速玉大社が座す新宮へと向かう「浜街道」、そしてもう一方は、内陸の山側を通って最短距離で直接熊野本宮大社に向かう「本宮道」です。
御浜町に残る「横垣峠」「風伝峠」は、この本宮道の一部。
最短距離で熊野本宮大社を目指した巡礼者はもちろん、奥地の山村と海側を結ぶ生活の道として、地元民にとっても大切なものでした。
1時間半ほどで歩けて、苔むした石畳や高台からの山々の風景も楽しめる風伝峠。
初心者の方でも比較的歩きやすく、魅力も多い風伝峠の旅の様子をご紹介します。
鉱山で栄えた尾呂志集落をスタート
現在も多くの民家が残り、のどかで美しい山里の田園風景が広がる尾呂志地区を出発。この地区は、かつて近くの紀和鉱山で働く人々で賑わった歴史を持ちます。
風伝峠は「風が伝う通り」という名前の通り、風の通り道になっています。季節や気候によっては、山から吹き降りる風とともに朝霧が滝のように流れ落ちる神秘的な現象「風伝おろし」を見ることもできます。
尾呂志地区にある「さぎりの里直売所」では、御浜町産の農産物や食べ物のお買い物もできます。古道歩きのお供に、人気で売り切れ必須、もちもちの食感と絶妙な甘さのあんこがおいしい手作りよもぎもちや、年間を通して様々な種類が味わえるみかんがおすすめ。
竹林と杉に囲まれた石畳の古道へ
尾呂志地区を抜けて歩いていくと、県道62号(旧尾呂志街道)の途中に、風伝峠へ向かう古道への標識が立っています。標識を曲がって田園の中を通り抜けていくと、道はだんだんと山の方へと分け入っていきます。
「国史跡 熊野参詣道伊勢路 風伝峠道」という石造りの標識を越えると、いよいよ本格的な山道への入り口です。
竹、杉、ヒノキなどさまざまな木々の緑に囲まれて、熊野古道らしいひっそりとした風情が漂う中、ゆるやかな道を登ります。大きな石組みの茶屋跡もみられる苔むした石畳の道は、絶好のフォトスポット。
標高257mの峠のてっぺんには、お寺へ通じる街道を示す苔むした法界塔が残り、往時の様子を伺うことができます。
深遠な紀伊山地を望む峠
下りの道でも、山々に囲まれた古い石畳の上を歩きます。眼下には奈良県や和歌山県方面の深い紀伊山地を一望することができ、とても景色のいいスポットです。
さらにここから先「通り峠」というコースを歩くか、車またはバスで10分ほど進むと、棚田の風景が美しい「丸山千枚田」へのアクセスも可能です。
初心者でも歩きやすく魅力の多い風伝峠
1時間半ほどで歩けて、アップダウンも少なめ。熊野古道の中でも比較的歩きやすいルートですが、古き良き山里の風景や、古道らしい苔むした石畳、連なる山々の風景を堪能することができます。
初心者の方にもおすすめのルートです。
歩行時間: 1時間30分距離: 約4.1km (高千良バス停〜後地バス停間)
【登り口へのアクセス】JR熊野市駅前から、熊野市バス熊野古道瀞流荘線で約30分。高千良バス停を下車し、尾呂志集落を横切るように15分ほど歩くと、風伝峠への登り口です。(バスの時刻表は、熊野市ホームページ をご覧ください)
みはま観光ガイドブック(PDF)
ガイドブック内の6・7ページに、横垣峠〜風伝峠を日帰りでめぐるモデルコースと地図が掲載されています。
KUMANO KODO (ISEJI South) / 熊野古道伊勢路(南)マップ(PDF)
熊野古道伊勢路を通しで歩く方に向けて作られたマップ。標高やルート上のトイレなど、詳しい情報が図を使って記載されています。表記は英語ですが、英語が苦手な方でも見やすいように作られた地図です。
風伝峠のマップは、20・21ページに載っています。
観光する
御浜町や周辺のパンフレットが豊富な観光案内所。併設のカフェもおすすめ
渡り蝶々アサギマダラが集まる、ピンク色の花畑
風に乗った霧が滝のように山の斜面を流れ落ちる、神秘的な現象。