数多くの史跡が残り、海を一望できる熊野古道伊勢路のルート
紀伊半島の中南部に位置する聖地・熊野三山を目指し、平安時代から多くの人々が歩いてきた信仰の道、熊野古道。
その中でも、伊勢から東紀州地域を縦断する全長約130kmの道が、伊勢路と呼ばれています。
現在の熊野市にある花の窟神社から、熊野古道伊勢路は2つのルートに分かれています。
一方は、七里御浜に沿って熊野速玉大社が座す新宮へと向かう「浜街道」、そしてもう一方は、内陸の山側を通って最短距離で直接熊野本宮大社に向かう「本宮道」です。
御浜町に残る「横垣峠」「風伝峠」は、この本宮道の一部。
最短距離で熊野本宮大社を目指した巡礼者はもちろん、奥地の山村と海側を結ぶ生活の道として、地元民にとっても大切なものでした。
みかん畑の真ん中や、海の見える絶景、美しい阪本地区の棚田の風景など、魅力の多い横垣峠歩きをご紹介。
コースタイム2時間10分、登り道も多く比較的体力を必要としますが、その分美しい景色や見どころが多い魅力的なルートです。
みかん畑の真ん中を通り、古道の入口へ
神木地区にある農産物無人販売所「なかよしステーション神木」の横が、古道への入り口となっています。
ここで、山歩きのおやつとしてみかんを買うことができます。この地域ならではの、無人販売を体験してみてはいかがでしょうか。
神木地区を出発し、舗装道から登山道に入ってしばらくは、なだらかな斜面に沿って植えられた柑橘畑の真ん中を通っていきます。
熊野古道を歩きながら、みかん畑の真ん中を旅する。「年中みかんのとれるまち」御浜町ならではの風景です。
みかん畑を抜けると、目印の標識があります。ここから木の階段も出てきて、少し上りの傾斜がきつくなります。
ここから先は、冬でも緑の葉が生い茂る、照葉樹林帯の明るい森の中の道を登ってゆきます。
弘法大師ゆかりの史跡「水壺地蔵」
きつい傾斜の登りがひと段落すると、少しひんやりした空気の中に苔むした祠があり、水壺地蔵と呼ばれる地蔵が鎮座しています。
地蔵の横には、かつてここを訪れた弘法大師が、杖で穴を開けて水を出したという伝説の湧き水があります。
かつての旅人にとっては、険しい山道の旅の疲れを癒し、喉を潤した貴重な清水でした。
熊野灘を見下ろす絶景の峠
さらに山道を登り、標高300m近くまで山道を登ると、連なる山の向こうに熊野灘を一望できる絶景の峠に到着します。
標高305mの頂上付近には「熊野古道 横垣峠」と彫られた立派な石碑も立っており、ここで記念撮影をするのもおすすめ。峠を越えると、比較的ゆるやかで平坦な道が続きます。
坂ノ峠と呼ばれる場所には東屋も建っていて、海と山々を見渡せる眺めのいいベンチで一休みできます。
お弁当を持って、ここで昼食をとってもいいでしょう。
峠を下り、棚田が美しい阪本集落へ
峠を降りると眼下に見えてくるのは、阪本地区の美しい山里の風景。
阪本地区は、狼の子孫であるといわれる紀州犬発祥の地としても知られています。
阪本へ向かう下りの道には、苔むした美しい石畳が残っています。
この石畳には、この地方特有の「神木流紋岩」が使われています。この岩は、地殻変動の際に強い熱量によって溶かされた石が、波状に固まったものです。
石畳の道の途中には「折山地蔵」と呼ばれる地蔵が立ち、旅人の姿を見守ります。
この付近の古道は、もともと土に埋もれてしまった部分が多かったのですが、地元の人々が発掘したことにより日の目を見ることになりました。
坂を下り切れば、阪本地区を見守る山のふもとに立つ折山神社に到着です。
神社の境内には、七里御浜から運ばれた白い玉石が敷き詰められています。これらの石は「御白石」「御白洲石」と呼ばれており、清らかな場であることを示す結界の意味を持つとされています。
峠を降りた後には、阪本地区から徒歩20分で行ける、尾呂志地区の「さぎり茶屋」で地元産岩清水豚のトンカツやハンバーグを食べたり、地元の農産物直売所「さぎりの里」でお土産を探したりと楽しめます。
また、尾呂志地区には宿も2軒あるので、静かな山里でのんびり一夜を過ごしてから、次の風伝峠を目指すのもおすすめです。
そのほかにも、車やバスで約20分のホテル瀞流荘や、トロッコ電車を利用して湯ノ口温泉などの入浴施設で汗を流すこともできます。
本格的な熊野古道歩きを楽しめる横垣峠
この地特有の神木流紋岩の苔むした石畳や、数々の史跡も残り、見所の多い横垣峠道。
海を一望できる峠の上からの風景や、みかん畑を通る御浜町ならではの風景など魅力が多く、体力に自信がある方にはおすすめのルートです。
歩行時間: 2時間10分距離: 約5.4km (横垣峠登り口バス停〜高千良バス停間)
【登り口へのアクセス】JR熊野市駅前から、熊野市バス熊野古道瀞流荘線で約15分。横垣峠登り口バス停で下車した目の前が、横垣峠への登り口です。(バスの時刻表は、熊野市ホームページ をご覧ください)
※横垣峠には、途中急な山道の登り下りをする箇所があります。お出かけの際には、地図、トレッキングシューズやリュックサック、水分など、登山に必要な装備をご準備ください。
みはま観光ガイドブック(PDF)
ガイドブック内の6・7ページに、横垣峠〜風伝峠を日帰りでめぐるモデルコースと地図が掲載されています。
KUMANO KODO (ISEJI South) / 熊野古道伊勢路(南)マップ(PDF)
熊野古道伊勢路を通しで歩く方に向けて作られたマップ。標高やルート上のトイレなど、詳しい情報が図を使って記載されています。表記は英語ですが、英語が苦手な方でも見やすいように作られた地図です。
横垣峠のマップは、18・19ページに載っています。
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世界遺産登録から20年の節目を迎えた熊野古道
風に乗った霧が滝のように山の斜面を流れ落ちる、神秘的な現象。
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