「年中みかんのとれる町」になるまで
御浜町のみかん
三重県御浜町では、その温暖な気候から「年中みかんのとれるまち」として、1年中様々なみかんが作られています。では、御浜町はどのようにして「年中みかんのとれるまち」への道を歩んでいったのでしょうか。その歴史を紐解いていきます。
御浜町の気候と土地はみかんづくりに適していると言われていますが、それは約300年前の文献からも確認できます。寛永3年(1750年)頃、当時の御浜町には野生のみかんであるタチバナが自生していたことが記録されています。タチバナは現在栽培されているみかんと同様に、暖かい気候と水はけのよい土地を好みます。このことから、御浜町は当時からみかんづくりができる下地があったと考えられます。幕末になると、和歌山県側から紀州みかんや八代みかんと呼ばれる現在の温州みかんに近いみかんが導入されました。ただ当時のみかんの木は家庭消費用程度で、庭先に数本植えられるくらいでした。その後、御浜町は明治末期から大正にかけて一時期、養蚕が盛んになりましたが、御浜町の土地がみかん栽培に適していると広く知られるようになり、桑園が柑橘園へと転換されていきました。ここから御浜町のみかんづくりが始まったのです。
その後は順調にみかんの栽培面積・生産量が増加し、昭和12年には温州みかん200トン、夏みかん750トンの生産量となり、今日の御浜町のみかん作りの礎を築くことになりました。しかし、昭和16年に太平洋戦争が勃発し、御浜町のみかんづくりは一時後退してしまいました。戦争による生産統制のため、労働力はもとより、みかんづくりのための肥料や農薬が不足したためです。さらには主食生産のために約20ヘクタールの園地が伐採されてしまいました。戦争の影響によるみかんづくりへのダメージは甚大でしたが、終戦後は柑橘農家のみなさんの尽力により、御浜町の柑橘園はわずか数年で元の状態に戻りました。さらには柑橘栽培研究会が結成され、より一層、みかんづくりが取り組まれることになりました。
昭和50年には御浜町で、経営規模の拡大と安定等を目的とする国営農地開発事業(パイロットファーム事業)が始まりました。この事業により、当時までのみかんづくりの主体であった温州みかんに甘夏やカラマンダリン、サマーフレッシュなどの中晩柑類が加わりました。その結果、御浜町は秋から冬だけでなく、春から夏にかけてもみかんが採れることになり、「年中みかんのとれるまち」となりました。また、同時期にみかんの輸送状況改善のための道路工事が行われました。両側をみかん畑に囲まれたこの道路はオレンジロードと呼ばれ、現在でもその名前が残っています。
昭和40年頃、御浜町下市木地区の崎久保春男さんという方が、自身の園地から早熟性の早生みかん(崎久保早生)を発見します。調査の結果、この品種は他地域の早生温州みかんと比べても一番早熟するタイプで、御浜町での栽培に適していることが分かりました。のちにこの品種は極早生とも呼ばれるようになり、その後の御浜町のみかんづくりの方向性の基軸となりました。さらに平成5年には、この崎久保早生とサマーフレッシュの交配により、「超極早生温州みかん(味一号* = 品種名 みえ紀南1号)が誕生しました。超極早生温州みかんは崎久保早生より更に1~2週間早く収穫することができる品質の良いみかんで、現在の御浜町のみかんの目玉商品となっています。
*味一号はJA出荷の場合の名称です
超極早生温州みかん(味一号)は、本州で一番早い時期に出荷される温州みかんです。果皮はまだ青い状態でも、果肉は鮮やかなオレンジ色なのが特徴。すっきりとした酸味と甘さのバランスが良く、まだ暑さが残る9月にはぴったりのみかんです。収穫時期は9月の上旬〜2週間ほどの短い期間で、主に中京圏の市場に出荷されます。
味一号のうち、一定の酸度と糖度の基準を満たしたものは「みえの一番星」としてJAより出荷されます。みえの一番星という名前には、「本州で最も早く出荷される温州みかんであること、そして後に続く御浜のみかんを引っ張ってほしい」という思いが込められています。このみかんが、今後の御浜町のみかん作りを照らす光になってほしいと願っているのです。
三重県は、豊かな自然や伝統などの三重の地域特性をいかした生産品・加工品の中から、全国的な知名度を有し、特に優れていると認められる県産品と生産者をセットでブランド認定しています。御浜町では、JA伊勢と温州みかん・カラマンダリンが三重ブランドに登録されています。
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温州みかんは私たちに最も馴染みのあるみかんです。御浜町では、水はけの良い土地、温暖多雨の気候等の特徴を活かして品質の良い温州みかんが作られています。また、マルチ栽培で生産された一つ一つのみかんを精度の高いセンサーを用いて選別を行い、レベルの高いみかんを出荷しています。
温州みかんとキングマンダリンの交配によってできた品種です。見た目や大きさは温州みかんと同じくらいで、濃厚な甘さが特徴のみかんです。3~4月に収穫されますが、貯蔵により酸を抜くため、4~5月頃に出回ります。
この他に御浜町周辺でしか栽培されていない希少なみかんがあります。
八朔と夏みかんの交配によってできた品種で、大玉で淡い黄色のみかんです。御浜町を中心に作られていて、御浜町と隣町の紀宝町だけで全国シェアの約99%を占めています。初夏にぴったりの爽やかな味わいです。
夏みかんに温州みかんを接ぎ木してできた品種で、外見は夏みかんの特徴を受け継いでいます。50年以上前から御浜町の下市木地区を中心に栽培されてきたため、この名前がつけられました。鮮やかなオレンジ色の果肉が特徴で、果肉の触感は温州みかんに似ています。グレープフルーツのようにスプーンで食べるのがおススメです。
三重県・和歌山県の一部地域でのみ生産されている幻のみかんです。見た目は酸っぱそうに見えますが酸味はほとんどなく、すっきりした甘さのみかんです。春光柑という名前は、和歌山県新宮市出身の詩人・佐藤春夫によって命名されたと言われています。
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