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「ベランダから海が見える家の建て方をしました」


高台にある海の見える一軒家。そこで暮らすのは、神奈川県出身の畠山 裕(はたけやま ゆたか)さん、和歌山県北山村出身の結季(ゆうき)さんご夫婦と4人のお子さんたち。2005年に三重県御浜町へ移住してきた。
御浜町への移住のきっかけは、結季さんの「実家の両親の近くで暮らしたい」という想いがあったからだという。

結季さん「新宮市で看護師をしていたのですが、ちょうど新宮市と実家の中間地点ぐらいの御浜町へ、結婚を期に移住しました」

2階のベランダから見える海は、毎日色が変わる

仕事を変えずに移住はできる

裕さん「生まれ育ったのは神奈川県で、大学は長野県へ。その後、名古屋で7年間プログラマーの仕事をしていました」

裕さんは、移住前に名古屋で勤めていた会社を続けており、移住時からずっとテレワーク(在宅勤務)で仕事をしている。移住してきたのは、さかのぼること17年前。今でこそ浸透した「テレワーク」「リモートワーク」といった言葉を、当時知る人はほとんどいなかった。

裕さん「最初は会社に『移住するので辞めます』っていう話をしてたんですが、在宅勤務っていう考え方もあるんじゃないか、という話になって。こういうルールにすればできる、っていうのを僕の方で考えて提案して。会社初の在宅勤務となりました」

テレワークを始めるにあたって、自ら作ったというルールは

・仕事部屋にカメラを設置し、名古屋の会社から裕さんの仕事部屋を常時見られるようにする(逆に会社の様子も見られるように)

・会社にいる時と同じように、スーツスタイルで勤務

・お昼休みはきっちり1時間。キッチンへ降りて、ご飯を食べたらまた2階の仕事部屋へ

などなど。ずっと家にいるからこそ、息抜きをし過ぎてしまわないように工夫したという。テレワークを始めた頃は、ネクタイも締めていたという徹底ぶり。

まさに、自宅オフィス。ここでは、会社にいる時と同じように過ごす

仕事を変えずに、拠点を変える。今でこそ、そんな新しいワークスタイルが広がりつつあるが、当時それを実行できたのは、裕さんの先見の明があったからこそ。でも、こんなほろ苦いエピソードも。

裕さん「いつも家に僕がいるので、子供たちは結構な年齢になるまで『お父さんは仕事をしていない』と思ってました(笑)

結季さん「よそのお父さんは『行ってきます』って外に行くけど、うちは『行ってきます』って2階に上がって行くんです(笑)」

ここ数年で瞬く間に世間に広がったテレワーク。娘さんたちも「みんながパパに追いついてきた!」と理解してくれたそうなので、一安心。お子さんたちにとっても、親が家にいるという安心感にもつながっていた。

時節柄、インタビューもリモートで

慣れない土地でも安心して子育てができた

四姉妹を育てるにあたり、御浜町が運営する「子育て支援室」を積極的に利用したという結季さん。

結季さん「私みたいに、よそから来た全然友達がいないお母さん同士で友達になって。支援室に行ったおかげで、1人目の育児からも結構気楽にできました。田舎暮らしは北山村で慣れていたけど、御浜町は初めてだったので、この地区がどの保育園に行くとかも知らなかったんですけど、そういう所は地元のママたちに教えてもらいました。近所には子供たちと同じ年代の子も多いです」

御浜町という小さな町だからこそ、地域の人たちが子供たちの顔を覚えてくれて、見守ってくれるという安心感も。実際に畠山さん宅のお隣のご夫婦も、お子さんが小さい頃はよく面倒をみてくれたという温かいエピソードも。

2016年撮影の四姉妹たち

↓6年後…

全員、すっかりお姉さんに!

御浜町は、国道沿いにスーパーやコンビニ、大型ドラッグストアやホームセンターもある。車を走らせると、大きなショッピングセンターのある新宮まで30分ほど。結季さんは、子供が小さい頃にはネットスーパーにも助けられたという。共働きで子育て世代の方にとっては強い味方だ。

反面、田舎ならではの子育ての苦労話も。それは、お子さんたちの学校や習い事などで、どこへ行くにも送り迎えが必要だということ。「一時はまるでタクシー運転手みたいでした(笑)」と裕さんは話す。だが言い換えれば、子供たちとより長い時間を一緒に過ごせるということ。テレワークだからこそ叶えられた、子育てのスタイルなのかもしれない。

田舎暮らしと都会の遊び、どちらも楽しむ

田舎暮らしは、自然が近く、都会にはないものがある。でも、逆もしかり。都会にしかないものに、憧れを抱くことも。

結季さん「津や鈴鹿のイオンモールに子供たちが行きたがるので、2~3か月に1回のお楽しみとして『今週末行くよ!』と家族の一大イベントみたいにしています(笑) あとは、主人の実家がある神奈川県に年2回帰省するのが、うちの帰省も兼ねた旅行です。都会の人が田舎に帰省する逆パターンですけど、子供たちも田舎から都会に遊びに行くのをすごく楽しみにしてて」

御浜町から一番近い都会の名古屋までは、車で約3時間。遠すぎず、近すぎない。田舎暮らしの合間に、ちょっと都会も楽しみたい。御浜町なら、そんな希望を実現できる。

ほどよい田舎での、気楽な暮らし

都会出身の裕さんだが、「都会に戻りたい!」と思ったことはこれまで一度もないという。

裕さん「七里御浜の海は、毎日見ても飽きないですね。日々、子供たちを学校へ送り迎えする時に、海を見て今日は凪だとか、荒れてるだとかを話題にしたり。地域の人との関わりは、自治会や趣味のバンドを通じてちょっとずつ輪が広がっていきました。あとは、保育園や小学校の役員などの、子供のための活動の中で知り合う人が一番多いですね」

結季さん「私は尾呂志地区に勤めてるんですけど、初めて風伝おろしを見た時はすごく感動して。山も海も楽しめますし、食べ物だとお魚やみかん、あとジビエのお肉とかもおすそ分けで頂いたりして。生活するにはすごくいい環境だと思います。ほどよい田舎というか、田舎すぎず、暮らしやすいかなって思います」

御浜町の山間部で見られる自然現象、朝霧「風伝おろし」

田舎暮らしと都会へのお出かけ。
そのバランスを上手くとって暮らすことができる町、御浜町。
家族の笑顔がある暮らしは、これからも続いていく。

(2022年2月取材 文・益田 奈央)