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平岡大輔さん(41歳)・優香さん(39歳)。

御浜町民だけでなく、近隣の町や県外からのリピーターのお客さんが絶えない、人気のドーナツ店「NISCO」を夫婦で経営している。

そんなお二人に、地元で起業したきっかけや、地域に愛されるお店づくりの秘訣を伺った。

ドーナツとの出会い

大輔さんは、御浜町上市木地区で、お米農家を営むご両親の元に生まれ育った。

お店をはじめる前は、御浜町のJA(農業共同組合)で主に金融サービスに関わる仕事をしていた。

出来上がったドーナツに、繊細な手つきでトッピングを施す大輔さん

優香さんは、御浜町の隣にある紀宝町出身。

大阪で1年間保育士をしていたが、御浜町に戻り、大輔さんと結婚した。

仕上がったドーナツをケースに並べる優香さん。ドーナツ作りから接客、お店の運営まで、夫婦で協力して行っている。

お二人の間には三人のお子さんが生まれ、自然豊かな御浜町で、子育てをしながら暮らしていた。

平岡夫妻とドーナツとの出会いは、ひょんなことがきっかけだった。

「奈良県天川村の音楽イベントに家族で遊びに行った時に、たまたまドーナツ屋さんが出店していたんです。

僕自身は最初あまり注目していなかったんですが、長男が”ドーナツおいしい!”と、何度も何度も買いに行っていて。

それを見て、ドーナツの可能性にピンときて、もしかしたら、自分でも作れるかもしれないと思いました」

「これは、いけるかも」感じた手応え

すぐに材料や道具を揃えて、さっそく自宅でドーナツ作りに挑戦してみたという大輔さん。

しかし、材料の配分や、きれいな丸い形を作るのが想像以上に難しく、すぐに挫折してしまったのだという。

そこで、見かねた優香さんがそれを引き継ぎ、ドーナツ作りをはじめてみることに。

すると、思った以上に良い出来栄えのドーナツができあがった。

もしかしたら、これはいけるかもしれないと思いました」と優香さん。

ドーナツを揚げる際は「ドーナツメーカー」という道具を使い、やわらかい生地をそのまま油の中に落とす。力加減や生地の硬さなどで仕上がりが左右されるため、細やかな作業が求められる。

それからは、どんどんドーナツ作りに夢中になっていった。

仕事の休みを利用して、京都、三重、愛知を周り、さまざまなドーナツ専門店を訪れた。

また、色々な種類の粉を購入して、タネの調合を試し、揚げ方や油の種類、温度を研究。

そうしてできた試作品を家族や周囲の人たちに食べてもらい、どんどん改良を重ねていった。

そうして優香さんは、少しずつ、自分なりのこだわりのドーナツを編み出していった。

夫婦二人三脚でお店をオープン

ドーナツに手応えを感じた、優香さんと大輔さん。

5年間にも及ぶ研究と構想を経て、ついにお店の開業を決めた。

当時、農協で働いていた大輔さんも、お店の外装や設備、レジの導入や経営面、SNS運営など、得意分野を活かしてさまざまな面で協力した。

お店のトレードマークともいえる、看板や外装の鮮やかな青色。

遠くからでもぱっと目を引いて、それでいて御浜町の風景にしっくりとなじむこの色は、二人の意見がぴったりと一致して決まったという。

ペンキを塗る際には、大輔さんが何度も塗り直しを依頼したというほど、こだわりぬいた青色だ。

お店の名前は、長女・新千果(にちか)ちゃん、長男・素直(すなお)くん、次女・倖芽(こうめ)ちゃん、子供たちの頭文字をとって「NISCO」に決まった。

「じつは、幼い頃から、自分のお店を作るのが夢だったんです」とインタビューで明かしてくれた大輔さん。

優香さんは「そうだったの!?それは、初めて聞きました」と笑う。

二人が出会って、お互いの得意なことを持ち寄ることで起きた、化学反応。

夫婦二人三脚で、子供の頃からの大輔さんの夢は、ついに現実となった。

オープン以来、人気のお店に

そして、2019年7月のお店のオープン以来、ドーナツ専門店NISCOはあっという間に人気店となった。

取材の間にも、Instagramに投稿する写真を撮る若い女性のグループから、軽トラに工具を積んだ男性まで、県内外からのお客さんが次から次へひっきりなしに訪れる。

「わざわざ遠くから買いに来てくださる方もいらっしゃって、本当にありがたいです」と優香さん。

中でも印象的だったのは、おじいちゃん・おばあちゃんが、小さいお孫さんの手を引いてドーナツを買いに来る姿だ。

お話を聞いてみると、隣の和歌山県にある新宮市からのお客さんだという。約3週間に1回、決まってここにドーナツを買いに来て、いろんな種類を買い、家族みんなで楽しむのだそうだ。

みんなが安心して食べられるものを作る

平岡夫妻が目指すのは「小さい子供からおじいちゃん・おばあちゃんまで、みんなが安心して食べられるドーナツづくり」。

NISCOのドーナツは、保存料や防腐剤を一切使用していない。

そのため、プレーンドーナツは、離乳食をはじめた赤ちゃんの「はじめてのおやつ」に選ばれることもあるという。

「保育士として働いていた経験や、自分自身も子育てをする中で、やっぱり”小さな子でも安心して食べられるドーナツを作りたい”という思いがありました」と優香さん。

また、近所のおばあちゃんが、杖をついて歩いて買いに来てくれることもあるそうだ。

年配の方には、特に大輔さんが手がけるサクサクした食感のオールドファッションドーナツが人気なのだとか。

単身赴任で遠方からこちらへ来ているお父さんが、奥さんや娘さんへのお土産として買っていくことや、友人同士が集まるシーンで手土産に選ばれることもある。

本当に、老若男女さまざまな人に愛されているのだということが伝わってきた。

お年寄りから子供まで笑顔になるドーナツづくり

今後は、アレルギーのある人でも安心して食べられるようなドーナツを開発したいと語る優香さん。

大輔さん自身が育てたお米を使い、米粉で作るドーナツを考案しているという。

「御浜町では、都会のお店に比べると、幅広い年齢の方がお客さんとして来てくれます。

だからこそ、子供からお年寄りまで、みんなにおいしい!と言ってもらえるドーナツを作り続けたいです

そう語る平岡夫妻の表情からは、地域内外のあらゆる人に、ドーナツを通して楽しい時間を過ごしてほしい、という想いが伝わってくる。

2022年の夏で三周年を迎える、平岡夫妻のお店。

二人が力を合わせて作るおいしいドーナツは、これからもたくさんの家族を笑顔にし、老若男女たくさんの人を幸せにしていくに違いない。



お二人が営む NISCO の詳細はこちらから→

(2022年2月取材 文・玉置 侑里子)