美味しい柑橘を育てるポイントや流れをご紹介!
みかんコラム
柑橘類とは、ミカン亜科のカンキツ属(Citrus)・キンカン属(Fortunella)・カラタチ属(Poncirus)に属する植物の総称。カンキツ属はインド東北部、キンカン属とカラタチ属は中国南部が原産とされ、世界各地でさまざまな種類の柑橘類が育てられています。
食用となるのは、カンキツ属とキンカン属の1部で、果肉を食べたり、ジュースにしたり、薬味として用いられています。カンキツ属には、温州みかんやマンダリンオレンジなどの「ミカン類」、夏ミカンや八朔、デコポンなどの「雑柑類」、バレンシアオレンジやベルガモットなどの「オレンジ類」、伊予柑やはるみ、タンカンなどの「タンゴール類」、そして、柚子やレモン、すだちやカボスなどの「香酸柑橘類」などがあります。
柑橘類にはいろいろな種類がありますが、小型の柑橘類の総称である「みかん」の中でも代表的な温州みかんは、収穫時期によって呼び方が変わります。
9月〜10月末にかけて収穫されるのは「極早生みかん」外皮がまだ青みを帯びているものの、じょうのうが薄くて食べやすいのが特徴です。少し酸味が強いため、甘酸っぱい方が好き、という方に好まれます。
10月中旬〜11月下旬にかけて収穫される「早生みかん」。極早生みかんよりも糖度が高く、甘みと酸味のバランスがいいのが特徴です。
12月上旬〜12月下旬にかけて収穫されるの「中生(なかて)みかん」は、外皮がオレンジで、糖度が高いのが特徴です。
「みかん」と聞いて多くの人がイメージするのが、この「中生(なかて)みかん」になります。
12月下旬〜3月にかけて収穫されるのは「晩生(おくて)みかん」。外皮が濃いダイダイ色をしていて柔らかく、程よい酸味があるのが特徴です。
晩生みかんは、収穫後、1ヶ月程度貯蔵することで余分な水分を抜いて、甘みを増してから出荷されます。
例えば、
・ポンカンの収穫は11月~12月頃で、出荷は1月~2月
・不知火は2月中旬~3月に収穫され、3月下旬~4月下旬に出荷
・甘夏は3月下旬~5月下旬が収穫時期で、貯蔵されてから出荷されるもの、木の上で熟させて収穫後すぐに出荷するものもあります。
種類によって、収穫時期や出荷時期が異なるので、好みの品種でスケジュールを分けて育てるのがおすすめです。
このほか、レモンは9月~6月まで収穫されますが、9月~12月に収穫されるものは、香りと酸味が強く、見た目が緑色をしているのが特徴で、1月~6月に収穫されるものは見た目が黄色く果汁がたっぷりと収穫時期によって見た目や味わいが異なります。同じ種類でも収穫時期によって味と見た目が異なるので、用途や好みによっていつ収穫するか、を決めるといいです。
※品種・産地により収穫・出荷時期は異なります
柑橘類を育てる方法には、種からと苗木からとの2つの方法があります。種から育てると、実がなるまで8年〜10年という長い時間がかかると言われるため、実を早く収穫したい場合は、苗木から育てるのがおすすめです。
苗木を購入する場合は、葉が濃い緑色をしているものを選びましょう。柑橘類の苗木の植え付け時期は厳寒期を過ぎた3月に入ってから。
植え付ける場所を決めたら深さ50cm・直径1mの穴を掘り、掘り上げた土と堆肥やリン酸・苦土石灰とを混ぜ合わせます。植え付ける苗木の根は軽くほぐし、傷んでいる根をハサミで切り直し、接ぎ木の部分が地表面より5cm以上、上に出る位置で根を四方に広げて土を被せます。
土を被せたら、苗木の周囲を軽く踏んで固めたのち、水をたっぷりと与えましょう。苗木の周辺を軽く踏んで固めた上でかん水をすることで、土と根を密着させることができます。植え付けたら、敷き藁などを根元に広げ、土の乾燥を防ぎましょう。
また、株元に支柱を立てて苗木が倒れることを防ぐことも大切です。
産地や土地の特徴にもよりますが、一般的には、柑橘類の施肥の時期は3月・6月・10月の年3回。
3月の施肥は春肥とも呼ばれ、新しい枝葉の成長や、実を収穫後の樹勢を回復させることを目的とするもの。植え付けで元肥をしている場合は不要です。
6月の施肥は夏肥。花が咲き、実をつける頃に肥料を与えることで実の成長を促すことができます。ただし、肥料が多すぎると果実が落ちてしまうこともあるので、適量を守ることが大切です。
10月の施肥は秋肥。実がついて体力を消耗している時期に肥料を与えることで耐寒性を高めたり、翌年の着花・春枝の成長を促すことができます。
施肥の時期が遅くなると、地温が低下することで根からの肥料の吸収が遅くなるため、地温が12度以上ある時期に施肥をしましょう。
地植えの場合、水やりは基本的に不要です。ただし、7月〜8月の時期に10日以上雨が降らない場合は、水やりをしましょう。
鉢植えの場合は、表面の土が乾燥している時には水をたっぷり与えるようにしましょう。
柑橘類は、一般的に収穫の2か月前の時期から水を控えめにすると実が甘くなるといわれています。育てている柑橘類の収穫時期から逆算して、水やりを調整しましょう。
柑橘類は病害虫に比較的強いとされていますが、アゲハチョウの幼虫や黒点病、かいよう病やそうか病、アザミウマ類やカイガラムシ類、カミキリムシなどに注意が必要です。
これらの病害虫が発生すると、味や収量、木自体に大きな影響を与えかねないため、地域の状況に合わせた防除策を適切に実施することが大切です。
柑橘類を育てるのに向いているのは、日当たりと水はけが良く、風当たりが強くない場所。鉢植えの場合は、雨が直接当たらない場所に置くと、一部の病害虫を防ぐこともできます。また、おいしい柑橘を育てるためのポイントとなるのが「剪定」と「摘果」です。
それぞれのポイントについて見ていきましょう。
新芽が付く前の2〜3月に行います。剪定することで枝が混み合うことなく、十分な日光を浴びる環境が整います。また、枝葉が茂りすぎないことで風通しが良くなるため、病害虫の予防にも効果的です。
植え付けたばかりの1年目の苗木を剪定する目的は、成長の促進と樹高の調整をすること。樹高が高くなりすぎると、実をつけた時に収穫しづらくなってしまうため、4・5本の主枝候補を残して芽かきします。
植え付けて2年目・3年目は、主枝や亜主枝とぶつかりそうなものや上向きに発生しているものを芽かきします。伸びすぎている枝を切り戻すことで、樹形を整えていきましょう。
4年目以降の剪定は、不要な枝を切る「間引き剪定」が基本ですが、柑橘類の実がなる年、実がならない年を交互に繰り返す「隔年結果」を解消するため、実がなった年は「切り戻し剪定」を、実がならなかった年は「間引き剪定」または「剪定しない」ようにすると、毎年実をつけることができます。
剪定の後に続く作業が「摘蕾(てきらい)」です。
摘蕾とは、実り始めた蕾を減らす作業のこと。1本の枝に多くの蕾がつくと、実をつけるために栄養が取られて樹勢が落ちてしまうため、蕾の数を減らすことで新芽を伸ばす効果が得られます。
また、摘蕾をすることで、年ごとに着果量が増えたり減ったりする「隔年結果」を防ぐことも可能です。産地により異なりますが、一般的には、4月~5月にかけて摘蕾作業を行います。
「摘果(てきか)」は、木になる実の数を調整する作業のこと。みかんの木は、自然と実が落ちる生理落下で実の数を減らしますが、必要以上に残った実を人の手で少なくしていきます。
摘果の目的は、美味しいみかんをつくるために、果実の肥大化と、栄養分を集中させて果実を美味しくさせること、そして「隔年結果」を防ぐこと。実が多くなると木の体力が低下してしまうため、幼い果実を7月〜8月にかけて間引くようにします(産地により時期は多少異なります)。
間引く数は、葉数を参考に。温州みかんなら、20~25枚で1果、レモンなら25枚に1果、ポンカンなら40~50枚に1果など、種類によって「葉果比」が決まっているので、栽培している柑橘類の種類の葉果比に合わせて、摘果しましょう。
柑橘類にはさまざまな種類がありますが、ここでは温州みかんと晩柑類、そしてレモンの育て方のコツをご紹介します。
温州みかんは、秋から翌春の時期に販売されている1~2年生の接ぎ木苗を購入し、3月中旬~4月中旬に植え付けるのがおすすめです。日当たりや水はけがよく、風当たりが強い場所を避けて植えましょう。
晩柑類には、いよかんや八朔、ネーブルやオレンジなどさまざまな種類のものがありますが、これらが市場に出回るのは冬。この晩柑類は、果実が色づく12月~1月の時点において果実に含まれるクエン酸含有量に違いがあり、含有量が多いほど、収穫が遅れます。
また、収穫から1~2か月は冷暗所で貯蔵し、酸味が抜けてから出荷するのが一般的。河内晩柑は、開花してから収穫するまで1年以上かかるため、果実と開花が同時に見られるのも特徴的です。
レモンは、5月~6月に花が咲き、秋以降に実を収穫というのが一般的。鉢植えの場合、2年目以降、地植えでは3~4年目に実を付けだしますが、植え付けた年に実をつけた場合は、翌年以降の収穫のために摘果するのがおすすめです。
また、寒さに弱く、最低気温が-2℃を下回る場合は枯れてしまう恐れがあるため、冬の寒さ対策は欠かせません。
みかんの農業では、1つの品種に絞るのではなく、さまざまな品種を組み合わせることで収穫時期を分散することができます。
品種を分散すれば、労働力を分散させることができます。収入のタイミングもばらけ、また、天候によるリスクの軽減も図ることができます。
一般的な品種ごとの収穫時期は、
・極早生 9−10月
・早生 10−12月
・ポンカン 12−1月
・不知火 2月
・せとか 3月
・八朔 2−4月
・はるか 2−3月
・清見 3−5月
・甘夏 4−6月
・カラ 4−5月
・河内晩柑 4−6月
となりますが、どの品種を選ぶかは、その地域の環境に応じて選ぶのがおすすめです。
三重県南部にある御浜町では、1年を通して柑橘類の栽培が盛んな産地です。9月中旬に出荷の始まる、超極早生温州みかん(味一号)が特産品で、「三重南紀のみかん」として知られています。
三重県御浜町の品種構成例は、
・超極早生 9月上旬-中旬
・極早生 9月中下旬-10月
・早生 10‐11月
・高等系温州 12‐1月
・伊予柑 12‐3月
・早香 12‐1月
・マイヤーレモン 12‐2月
・ポンカン 1‐2月
・セミノール 3‐5月
・せとか 3‐5月
・不知火 3‐5月
・カラ 4‐5月
・甘夏 3‐6月
・サマーフレッシュ 5‐6月
・ハウスみかん 6‐9月
と、一年を通じて柑橘類を栽培することができるので、収穫時期の異なる品種を選ぶことで、労働力・収入・リスクの分散が可能になります。
柑橘類には様々な種類があり、それぞれの種類で味わいや収穫時期が異なります。
日本全国、その土地それぞれで、適地適作があり、栽培方法も異なります。それぞれの環境に合ったやり方で、柑橘類の栽培を行うことが、おいしい柑橘作りに繋がります。
三重県御浜町では、新規就農を目指す研修生と、新規就農から間もないみかん農家を対象とした「みかん講座」を開催しています。町が主催する「座学」で、この産地を長年に渡り見てきた「柑橘栽培アドバイザー」が講師となり、畑(現場)での学びに加えて柑橘、植物の生態・生理、肥料や薬剤について、また雨量や土地のことなど、御浜町の土地での柑橘栽培方法について学ぶことができます。
初めて農業をされる方も、就農(独立経営)に向けて学びを深めることができ、農業初心者の方にとって心強い場となっています。また、Iターン移住された方にとっては、横の繋がりを作る場にもなっていて、受講者から大変好評です。
御浜町は、一般的な就農支援に加えて、みかん講座をはじめ、独自の手厚い支援策を就農前から就農後まで受けることができるので、安心して農業をはじめることのできる町です。
「みかん、やったらええやん」▼ 三重県御浜町の持続可能なみかんの産地を目指す物語 ▼
三重県御浜町でのみかんづくりについて、詳しくはこちらをご覧ください↓
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