年間通して様々な品種を揃え、美味しさ自慢のみかんを直売所で試食してから購入できる他、通販でも購入可
御浜町・下市木地区にある「御浜柑橘」。御浜町や近隣農家のみかんを集荷・撰果して販売する他、自社でみかん栽培やジュースなどの加工品も手掛けている。直売所では、好みの甘さやサイズのみかんを購入でき、全国発送にも対応。御浜町近辺はもちろん、休日には遠方ナンバーの車も多く訪れるほどの人気。
現在代表を務めるのは、御浜柑橘の三代目社長・芝 安博(しば・やすひろ)さん。今回は芝社長に、御浜柑橘のみかんへのこだわりや、魅力についてお伺いした。
「年中みかんのとれるまち」と謳う御浜町。その名の通り、一年を通して様々な柑橘を味わえる。御浜柑橘でも、9月に果皮の青い超極早生から始まり、11〜12月の早生といった人気の品種をはじめ、不知火(しらぬい)、みえのスマイル、はるみ、甘夏など晩柑が多数、全部で20種類ほどの取り扱いがあり、旬の柑橘を1年中購入することができる。
中でも人気なのは、11月中旬〜12月中旬に旬を迎える「幻」「めちゃ甘」と名付けられた糖度の高い早生みかんや、2月に旬を迎える麗江(れいこう)・はるみといった品種。自社工場でつくるジュースは年間を通して7〜8種類を扱っており、最近では不知火やカラマンダリンなどがよく売れているのだとか。
「御浜で採れるみかんはほぼ食べ尽くした」という芝社長。その中でもおすすめを聞いたところ、紹介してくれたのが「みえのスマイル」だ。「さわやかで、独特の甘みが美味しいんですよ」
御浜町にある三重県紀南果樹研究所が開発した、「春光柑」と「清見オレンジ」を掛け合わせた特許取得の品種で、芝社長がその名付けにも関わったという思い入れの強い柑橘なのだとか。栽培している農家は3〜4軒しかなく、取り扱っているのも御浜柑橘のみという、かなりレアなみかん!にっこり笑った口元のように切る「スマイルカット」でいただくのがポイント。旬は毎年2〜3月頃とのこと、次の旬にはぜひ試してみてはいかがだろうか。
みかんを買う際、見た目では美味しいかどうかわからなかったり、甘いみかんと、そうでないものが混ざっていることがあったりもするが、御浜柑橘では、その心配はご無用だ。光センサーで糖度・酸度などを緻密に測ってみかんをランク分けしているため、少量で買っても、箱でたくさん買っても、「ひとつ食べて美味しかったら、最後まで全部美味しい」みかんを買うことができるのだ。
色味や傷も調べて選別しているので、自分で食べるみかんはもちろん、贈答用に美味しくてきれいなものを贈りたい、そんな時にも頼りになる。
御浜柑橘は、現社長のお祖父さんが始めた。親戚がつくったみかんを集荷し、販路を開拓するところからスタートした。そこからさらに周囲の農家に声をかけたり、農家から依頼を受けたりしながら徐々に規模を広げ、現在では青果市場や県内各所の産直品を扱うお店への卸しだけに留まらず、自社で通販も行なっている。
長野・福島・宮城など、イベントでの販売にも社長自らが出向いているのだとか。北国ではみかんが喜ばれるという。
事業を受け継いで10年ほどが経つ三代目の現社長も、子どもの頃から夏になるとみかん畑に駆り出され、芽切り(不要な新芽を切り落とす作業)などの作業を手伝っていたのだとか。
長年産地をみてきた芝さんは「みかんの産地・御浜町」の特徴をこう語る。「御浜は他のみかんの産地と比べると、なんと言っても雨量が多い。一度にたくさん降ってそのあと晴れるので、雨で酸が抜けて、晴れて甘味が増す。これを繰り返すことによって美味しいみかんができるんですよ」
国内の主要産地をはじめ、中国の温州、韓国の済州などにも赴き、それぞれの産地の特性や工夫を視察。その知見は御浜柑橘でのみかんづくりにも生かされている。
御浜柑橘で販売されるみかんを作るのは、主に30軒ほどの近隣農家。撰果や販路開拓を一手に引き受けることで、農家は美味しいみかんを作ることに集中できる。「とにかく農家さんに美味しいみかんを作ってもらって、お客様に喜んでもらいたいです。それが一番ですね」
品質の良いみかんは「幻」「メチャ甘」など高級みかんとしてブランド化し、価値をつけることで農家の収入を上げる。品質をチェックして通信簿をつけ、やりがいに繋げるなど、お互いのメリットを最大化する工夫もしている。
「美味しいものをつくって、みんなで稼げたらいいな」
という言葉の通り、農家さんを集めて月に一回の勉強会を開くなど、それぞれの知識を持ち寄って、よりよいみかん作りをするための努力も欠かさない御浜柑橘。試行錯誤して、トライ&エラーを繰り返す。糖度の高い美味しいみかんがたくさん採れることは、御浜柑橘にとっても、農家さんにとっても、そして消費者にとっても嬉しいことなのだ。
先代が社長を務めていた時代は、ほとんどがパートのスタッフで経営が成り立っていたそうだが、過疎高齢化が進むこの地域では、人員が集まりにくくなり、現在では地域の方の常時雇用に加え、海外からの技能実習生を受け入れている。彼らの仕事をつくるという意味でも、自社で管理する農園の規模も少しずつ増やしているところなのだとか。
近年様々な問題を引き起こしている気候変動やそれに伴う異常気象は、みかん栽培にも大きな影響を与えている。今までと季節の進み方が違ってきているため、通常とは異なる時期に芽が出てきてしまったり、みかんが大きくなりすぎてしまうなど、目に見える変化がここでも起こっている。
気候変動に対応したみかんの栽培を模索し、みかんづくりをこの先も続けていくことが一番ではあるものの、アボカド、パパイヤ、バナナなど、南国で栽培されている作物も実験的に育ててみる、というチャレンジを始めているのだとか。将来的には御浜産のアボカドやパパイヤ、バナナなどが市場に出回ることもあるのかもしれない。
どんなに仕事が忙しくとも、早朝に30分でも1時間でも海釣りに出かけるほど、御浜の海が好きだと言う。美しい御浜町がいつまでも続いていくことは、この地で生まれ育ち、自然と共に働いてきた芝社長にとって、願いでもある。
「みかんも勿論だけれど、野菜とか、南国フルーツでもいい。IターンでもUターンでも、御浜町にきて農業をやったり、暮らしたりする人たちが増えてくれたら嬉しいですね」と希望も語ってくれた。
取材で訪れた際も、大きな袋でたくさんのみかんを購入するお客さんの姿があった。自宅用やご近所さんに配ったりするほか、離れて暮らす子どもたちに送るために購入する人も多いのだそう。
御浜柑橘のウェブサイトでも購入はできるが、直売所で試食をすれば、その美味しさに納得すること間違いなし。ぜひ、訪れてみてはいかがだろうか。
(2024年11月取材 文・本沢 結香)
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御浜町産にこだわって、みかんなどの農作物や加工品を販売するお店。
旬の新鮮なみかんや、自社工場で搾った果汁100%のみかんジュースを販売するお店。
東紀州一番の品揃えと店舗面積を誇る、道の駅内のお土産店。